「ギブ&ギブ」で考える価値とお金と"貸し"と理想的な経済のお話

ギブ&テイク、ではなくギブ&ギブにしよう、という論調をどこかで見たことがあるのではないでしょうか。

このギブ&ギブという考え方なのですが、自己犠牲をベースにしていたり、どこか論調が破綻していたり、というイメージが強く、個人的には全然しっくり来ていなかったのです。

それが、やっとしっくり来るようになりました。

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価値とお金の関係

現代資本主義社会においては、一般的に価値はお金で表されます。

それ以外で表される価値ももちろん重要なのですが、万人が客観的・普遍的な価値として考えるものはお金だけでしょう。

お金には日本円・USドル・暗号通貨など様々な種類がありますが、ここではそれが何なのかを問わず「お金」ということにします。

 

100円でコーヒーを売っているコーヒースタンドがあります。

そのコーヒーを飲んだ後に、人の行動は以下の3つのパターンにわかれるとします。

  • 二度と来ない
  • ある程度満足する
  • 積極的に再来店する

提供された価値<支払った価値の場合

100円払ったのに、全然100円の価値がないじゃないか。

そんなケースです。

それは美味しくなかったのか、接客がひどかったのか、衛生面が悪かったのか、様々な要因があるとは思いますが、価値のあるなしは主観的なものなので要因は問いません。

こうなった場合は、「こんなにたくさん(100円)払ったのに、期待はずれだった」という感情となり、もういかない、となってしまうのです。

そういうお店は市場競争の中で淘汰されていき、どんどん見かけなくなっていくはずです。

提供された価値≒支払った価値の場合

一般的な商取引はこのケースでしょう。

100円のコーヒーを買った。値段相応だな、と思った。

もし近くを通って、そのときに喉が乾いていたらまた買うかもしれないが、わざわざ遠くから飲みに行くほどでもない、普通のお店です。

大手チェーン店など、より効率化・マニュアル化されたオペレーションで均質的な品質なものを提供しており、且つ、価格戦略を緻密に実施していると支払った価値と全く同じ価値を提供するようになるため、効率化の行き着くところはここではないでしょうか。

特に不満もないので沢山の人が利用しますが、積極的にまた来ようとはならないはずです。

提供された価値>支払った価値の場合

100円のコーヒーを買ったら、なんて驚くほど素晴らしいものだった。300円のお店かと思うほどのものだった。そんなケースです。

効率化を考えれば、300円に値上げすれば良いじゃないか、となるのですが、その時の価値の動きはこうなります。

  • お店→客 300円(分の価値)
  • 客→お店 100円+200円分の"心の借り"

ここでは多く与えられた(ギブされた)価値を"心の借り"と表現しました。

私たちは借りがあればそれを返そうとするように考えるのです。

貸しも借りもない状態が一番の平穏であり、その状態を望むものなのです。

 

素晴らしいサービスを受けて「あ、このお店にいつか恩返しがしたい」と考えることがあるのではないでしょうか。

そうした時に、友人を紹介したり、せっかくだから、とわざわざ電車に乗ってお店まで行ったりと、コストをかけてでも行こうと思うのです。

そして、これこそが「ギブ」の効用だったのです。

実は世界はギブで成り立っている

そう考えると、実はこの世界はギブで成り立っているのかもしれません。

経営者は労働の対価として給料を払う。従業員は労働の対価としても給料を受け取る。

これは典型的なギブ&テイクの考え方であり、価値の等価交換を行っています。

 

これを、こう考えたら世界はどうなるでしょうか?

  • 会社は従業員に対して仕事を通じた自己実現の機会を提供(ギブ)しており、それに関するサポートも提供(ギブ)している。
  • 従業員は会社の目的を一緒に達成するために、価値を創出するという役割を提供(ギブ)している。
  • 会社は従業員に対して、その成果に感謝をした上で感謝の印としてお金(給料)を提供(ギブ)している。

こう考えると、世界はすべてギブで成り立っているのです。

そして、この考え方では価値の等価交換は行われていません。

正確に言えば、全員が相手からもらえるであろう価値よりも大きな価値を最初から提供している、のです。

その時に、決して企業は従業員を搾取しようとは考えていませんし、従業員も必要最低限の働きをしていません。

しかも、お互いにサポートしあっているので自己犠牲も必要ない。

 

先ほどのコーヒーショップの例で言えば、価格よりも大きな価値を常に出しているということ。

だからこそ、"心の借り"というかたちで提供した価値が相手に残り、相手はそれを返したくなる。

それを続けていくことで、結果的に大きな価値が生み出され、また、帰ってくる。

これこそがギブ&ギブの言わんとするところなのだと考えました。

お金とそれ以外の価値を同等に考える

支払った対価を遥かに上回る価値を"心の借り"という言葉で表現したのですが、最近はお金以外の価値が今までとは比べ物にならないほどに重要になってきているようです。

正確にいえば、今まではお金に変換することのできなかった価値がお金に変換できるようになり、より普遍的な価値として受け入れられるようになったのかもしれません。

それはクラウドファウンディングや、Youtube、ブログなど人が持っていた無形の価値をお金に変えられることが簡単になったからかもしれません。

そう考えると、お金は価値をわかりやすいかたちで変換したものと考えられるのではないでしょうか。

 

お金や有形のものの価値ばかりが認められるのはもう過去のことで、お金ではない、無形の価値がより重要になっていく。

そして、それはいつかお金に変えることができる。

そう考えると、色々しっくり来るのではないでしょうか。

まとめ

相手から何を受け取ったか。それをしっかりを理解をすること。

そして、自分の利益を考える前に相手に何を与えられるかを考えること。

これは簡単なことではありませんが、これがしっかりできている状態がそもそものギブ&ギブの前提なのでしょう。

ギブ&ギブの考え方をもっともっと深めて、広めていければより素晴らしい世界になるのではないか、そう感じました。

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